夜に歯が痛くなるのはなぜ?その原因と対処法を紹介
最近では、予防歯科の概念が広まり、虫歯にかかる人が減ってきました。それでもやはり、ほとんどの人は、「歯が痛い」という経験を1度はされていることかと思います。なぜなら、歯が痛くなるのは虫歯だけに限らないからです。ここでは夜に歯が痛い時に考えられる原因やその対処法についてご紹介します。
夜間に歯が痛くなる原因と対処法
歯髄炎(しずいえん)
歯髄炎とは、歯の神経に炎症が生じる病気で、主に虫歯に由来しています。虫歯菌がエナメル質や象牙質を越え、歯髄にまで感染を広げた時に起こる症状です。歯髄には、歯の神経と血管が含まれており、炎症によって血流が増加すると、神経が圧迫されます。その結果、血管が膨張する動きに合わせて、ズキズキと痛む「拍動痛(はくどうつう)」が生じるようになるのです。
▼歯髄炎への対処法
歯髄炎は、かなり進行した虫歯ですので、早急に歯科治療を受けることが大切です。虫歯菌によって汚染された歯髄を抜き、歯の内部を無菌化する「根管治療(こんかんちりょう)」の対象となります。痛みで眠れない時の応急処置としては、市販の痛み止めを飲むか、患部を冷やすことで拍動痛を軽減できます。
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
根尖性歯周炎とは、歯の根っこの先で炎症が起こる病気です。「歯周炎」という名前がついているため、炎症が生じるのは歯槽骨などの歯周組織なのですが、根本的な原因は虫歯にあります。虫歯菌が根管内で繁殖し、その一部が外へと漏れ出るのが根尖性歯周炎だからです。ちなみに、根尖性歯周炎では歯の神経が死んでしまっているので、「歯が痛い」と感じることはありません。痛みを感じているのは、歯茎の周囲に存在している神経です。
▼根尖性歯周炎への対処法
根尖性歯周炎では、根管内を無菌化する「感染根管治療」が行われます。歯の神経はもうすでに死んでいるので「抜髄(ばつずい)」などの処置は必要ありません。夜間に強い痛みが発生した場合は、市販の痛み止めを飲むことで症状を安定させます。
咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)
咬合性外傷とは、歯ぎしりなどが原因で歯周組織に痛みや炎症症状などが生じる病気です。夜間に歯や歯茎に痛みを感じることがあるのですが、虫歯とは異なり、細菌が原因となっていません。歯や歯茎に過剰な負担がかかることで、歯根膜などに炎症が生じています。
ですから、痛みの種類も歯髄炎のような拍動痛ではなく、歯ぎしりや食いしばりなど、歯と歯を強く噛み合わせた時に、一過性の痛みが生じるようになります。ちなみに、夜間に痛みが発生しやすいのは、歯ぎしり自体が就寝中に起こりやすいからです。
▼咬合性外傷への対処法
歯ぎしりによる咬合性外傷には、就寝中にマウスピースを装着する治療法が一般的です。患者さんそれぞれのお口に合ったマウスピースを作製して、夜間に装着することで、歯や歯茎への負担を減らします。また、マウスピースを使用していく中で、歯ぎしりという悪習癖も徐々に改善されていきます。
その他の原因
夜間に歯が痛くなる場合、上述した病気以外にも「歯周病の急性症状」や「親知らずのトラブル」、「歯の破折」などが考えられますので、異常を感じたらできるだけ早く歯科を受診しましょう。
なぜ夜に痛くなるのか?
ここまで、夜に歯が痛くなる原因についていくつかご紹介しましたが、そもそもなぜ「夜」なのか気になりますよね。その理由は、主に以下の3つが挙げられます。
頭部への血流が増える
私たちは普段、学校や職場などでいろいろな活動をしています。一日中立ち仕事をしている方も多く、頭は常に体の最も高い位置にあります。すると、重力の関係上、血液は体の下へと流れがちです。一方、夜間にはソファやベッドに横たわり、血液が頭部へと流れやすくなるため、血管も膨張しやすくなるのです。その結果、神経の圧迫が起こり、痛みが生じることとなります。
副交感神経が優位になる
血圧や呼吸、体温などのバイタルサインは、自律神経によってコントロールされています。自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、活動中には前者が優位となって血管を収縮させるなどの調整を行います。一方、休憩中には後者が優位となり、血管の拡張や血流の増大などが起こります。夜間はリラックスする時間なので、副交感神経が優位となるため、歯の痛みなどが生じやすくなるのです。
入浴による血流の増加
就寝前にお風呂に入る人は多いかと思います。入浴は副交感神経を優位にすると同時に、全身の血流を増加させるため、血管の膨張による拍動痛などが起こりやすくなります。
まとめ
このように、夜間に歯が痛くなるのは、虫歯そのものはもちろんのこと、虫歯に由来する歯髄炎や根尖性歯周炎、虫歯とは全く関係のない咬合性外傷や親知らずなど、いろいろな原因が考えられます。重要なのは、それぞれの原因にあった対処を行うことです。いずれにせよ確定的な診断は歯科医にしか下せませんので、夜間に歯痛にお悩みの方は早急に歯科を受診しましょう。
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2017/12/01医院情報